永井路子「雲と風と」


天台宗・最澄の生涯を描いた歴史小説。仏教の歴史を追いかけているので、当時の時代背景、桓武天皇からの必然的出会い、南部六宗との論争、空海との繋がり、東国下野、上野での鑑真弟子らとの出会いとその後最澄の意志改革などを興味深く読んだ。

空海が入唐して長安で密教を習得するのに対し、最澄は天台山で天台宗習得を目指す。当時の唐では天台宗より密教の方が盛り上がる事から、帰国後最澄が密教の解釈をめぐり空海に教えを請うがやがて空海からの絶縁にあうことは知られている。小説ではこの背景を丁寧に描いており、確かにこういう状況で有ればこの史実も理解できる。

比叡山にも10年ぐらい前に3度ぐらい行ったが、今度は最澄が生まれた坂本の地を巡り根本堂に登ってみたい。