飛鳥や出雲に関係する本を連続で読んでいる。出雲関連本の中でよく「出雲国風土記」が引用されているので、他国の風土記もついでに読んでみた。
風土記は、太安万侶が元明天皇に撰上した和銅5年(712年)の翌年の和銅6年(713年)に、諸国の国司に郷土史的文章の編纂を命じて作られたものと認識している。官命が求めたものは、
地名には好ましい名(漢字)をつけること
土地の鉱産物や動植物の品目名
山川原野の名称の起源
土地の肥沃
古老の伝える伝承
このような地方白書という性質ももった風土記は、律令制度を整備し、全国統一を成し遂げた朝廷は諸国の国情を知る必要があった。中国の事業に倣って地方支配の指針作りが目的であったとのこと。
諸国に命じたので全部ありそうだが、現存するのは5つ。それ以外の諸国の「風土記」と呼ばれる文章は断片(逸文)として残っている。
現存するのは、
- 常陸国風土記(養老2年、718年)←命から、5年後
- 播磨国風土記(霊亀元年(715年)前後)←命から、2年後←本当か?速い!
- 出雲国風土記(天平5年、733年)←命から、20年後
- 豊後国風土記(天平4年(732年)前後)←命から、19年後
- 肥前国風土記(天平4年(732年)前後)←命から、19年後
一方、逸文の方は、江戸時代の国学者によって収集され、林羅山がこの作業に着手して以降、明治時代の栗田寛の「古風土記逸文考証」として集大成されたとのこと。それによると、
記紀神話の中核と言われる「天孫降臨」の記述は、
- 常陸国風土記
- 豊前国風土記逸文
- 日向国風土記逸文
- 薩摩国風土記逸文
浦島太郎の原像やテント葦原中国を結ぶ伊邪那岐の梯子などの
- 丹後国風土記逸文
スサノオが伝える厄病除け祭りの伝承を伝える
- 備前国風土記逸文
天羽衣伝説を伝える
- 近江国風土記逸文
- 丹後国風土記逸文
- 駿河国風土記逸文
- 摂津国風土記逸文
天皇がその神秘の力を感じて霊力を求める温泉に関して、
- 摂津国風土記逸文(有馬温泉)
- 豊後国風土記(間欠泉「玖倍里(くべり)の井」)
- 肥前j国風土記逸文(雲仙温泉)
- 伊豆国風土記逸文(箱根温泉)
- 伊予国風土記逸文(道後温泉)
- 出雲国風土記(玉造温泉)
巨木や巨木による造船伝説に関しては、
- 伊豆国風土記逸文
- 播磨国風土記逸文
- 築後国風土記逸文
- 下総国・上総国風土記逸文
- 常陸風土記
- 相模国風土記逸文
- 肥前国風土記
伊勢の祭祀に関しては、
- 伊勢国風土記逸文
住吉三神に関しては、
- 摂津国風土記逸文
荒ぶる神々で通交を妨害する話に関しては、
- 播磨国風土記
- 大和国風土記逸文
- 駿河国風土記逸文
荒ぶる神々を鎮めるために祭られた話に関しては、
- 常陸国風土記
- 播磨国風土記
527年(継体21年)の筑紫磐井の乱を著すものとして、
- 筑紫国風土記逸文
山々の神の話は、
- 播磨国風土記
- 阿波国風土記逸文
- 伊予国風土記逸文
- 出雲国風土記
- 播磨国風土記
- 近江国風土記逸文
- 甲斐国風土記逸文
- 常陸国風土記
などなど、
貴重な土地の言い伝えが興味深い。その地方に行く際は、再度風土記や風土記逸文を再度読んでから行くと、神社仏閣・土地の名前・特産品の特徴が理解できるだろう。