黒岩重吾「女龍王 神功皇后」


平成14年(2002年)文庫本初版。

 

先ずは、本著の冒頭にある系図を参照させてもらい、この本のポイントを記す(ネタバラシではない)。

本著では、欠史八代(第2代綏靖天皇から第9代開化天皇までの8人の天皇、あるいはその時代)はちょっと置いておき、右図の第10代崇神天皇の時代に大和王権が樹立したとして第15代応神天皇までの古代ロマンを神功皇后を中心に4世紀後半の物語として描かれている。

 

崇神王朝という大和の王朝が第13代政務天皇や日本武尊の皇子である第14代仲哀天皇の時代までにその権力衰退と国内の混乱があった。その中で、もともと大和国の南部地方の葛城氏は、朝鮮半島の交易などを目的として垂水まで進出した。その王が下図にある葛城垂水王。

 

その娘の葛城高額媛が、近江・息長宿祢王に戦略結婚で嫁ぐ。嫁ぐ前に高額媛は、好意をよせる男子(本著では後の建内宿祢)との間に龍神の働きで子を宿す。これが息長姫(神功皇后)。

後は、読んでのお楽しみとするが、今まで印象に残った古代の事績と異なる3点を記しておく。

  • 神功皇后は巫女(海の神・龍神)であること
  • 神功皇后は新羅征伐に行かないこと
  • 熊襲征討もしないこと

クライマックスは、ホムタ王子(応神天皇、誉田別尊)を伴い、北九州の豪族(和珥氏など)、九州南部の熊襲や隼人族、また日向国、瀬戸内海の豪族や実家筋である葛城市を中心に、忍熊王を滅ぼし大和王権の確立するところである。

 



これまで大和の豪族として葛城氏をよく聞いていたが、確かに大和国・河内国・紀の国との土地のつながりや紀の川を使った海の道も確保した勢力は強かったと思う。本著はそういう点でも古代ロマンを追う知識になった。