田辺好隆「日本の歴史に真実」


奈良の古代文化研究会編「論考 邪馬台国&ヤマト王権、田辺好隆著、日本歴史の真実」青垣出版2012年。

 

田辺好隆氏は「日本の歴史に真実」の中で、

  • 推古天皇以前の天皇崩御年が、古事記と日本書紀で記載されているものが異なっている

ために、日本書紀では、讖緯説(中国で、前漢から後漢にかけて流行した未来予言説)をもとに、

  • 推古9年(西暦601年)は改革を行われるという「辛酉」年に当たる西暦601年を起点とし、
  • かつ、60年で一巡する「辛酉」年の21回目=1260年前が「大改革があった年」として神武天皇即位年を設定
  • その結果、神武天皇即位年が皇紀元年、つまり紀元前660年(={601-(60×21-1)})とした

と解説している。

 

この前提より、古事記と日本書紀の歴代天皇の崩御年の違いを数値的に分析し、概ね、古事記の年表で書かれている崩御年の間隔を平均的に見て約3倍に拡張して日本書紀の歴代天皇の崩御年がつくられ、皇紀元年(紀元前660年)の神武天皇即位から推古天皇までの歴代天皇の崩御年を割り出している。

 

この分析結果が、同本161頁に掲載されている年表である。

ちなみに「平均的に見て約3倍」は単純にどれもこれも天皇の崩御年間隔を3倍にすることではない。単純に3倍してしまうとこの本の分析方法が分からなくなる(2週間は頭を痛めた...)。

 

田辺氏のプロフィールを読むと、大きさ、強度、安定性など「すべて数字」といえる船の設計をされている。例えば、船の底を作る工程を創造すると、一枚の規定サイズの鋼板の始端から終端まで必要に応じていろいろに厚みを調整しながら鋼板を伸ばしていくはず(圧延処理)。加工前後の板の始端を合わせて、始端から終端までの長さを比較すると、当然両方の板の始端から終端までの長さは異なる。長さが異なる原因は、強度設計の方針に従い、始端から必要な個所で厚み調整しているためである。処理前の板の始端からのある距離(Lx)における微小区間Δx1が圧延後にΔx2に伸びていれば、その個所における圧延率はΔx2/Δx1となる。...恐らく、圧延加工の時に、板の個所毎に圧延率を求め、平均的に見れば何倍に圧延したことになるかという解析方法ではないかと思われるが、これ以上は、本題からそれるので割愛する。

 

話を本題に戻して、田辺氏が分析した結果の表が、同本の161頁にあるものが、下表。

  • 左から第2列が日本書紀に書かれている歴代天皇の崩御年
  • 第4列では、天皇の崩御年間隔を日本書紀に照らし合わせた時に、何倍になっているかを示したもの。「平均的に約3倍」としているのは、神武天皇~崇神天皇までの間が日本書紀では630年とあるが、これは3倍に引き伸ばしたものと解釈して、
  • 古事記で書かれている崇神天皇の崩御年318年から630÷3=210年を引いた西暦108年が神武天皇即位年としている。

そこで、上表の最右列に分析された各天皇の崩御年を参考に、日本書紀で整理された天皇崩御年(宮内庁の歴代天皇の在職期間と同じ)と田辺氏の結果をデジタル年表に比較したものが下図。

 

初代の神武天皇即位年が西暦紀元前660年(皇紀元年)が紀元後108年になるので、思い切り短縮されていることが分かる。

さて、この年表を参考に、今後の予定は、

  • 黒岩重吾、森浩一、梅原猛らの古代史観と照らし合わせて、
  • 実在性のある天皇やない天皇
  • 各地域の豪族と王家との関係
  • 婚姻関係
  • 祭祀の違い

などなど、関係本を調査して、独自の古代年表を作る予定。

 

途中、古代史のとらえ方の要点も整理しながらなので、これも時間がかかりそうだが。