黒岩重吾「天風の彩王 藤原不比等」


初出誌「小説現代」1995年1月号~1997年1月号。書籍第一版1997年10月。上下本。

 

24年前の本。主人公の藤原不比等7歳から62歳までの歴史小説。明確にはしていないが、天智大王の「子」という暗黙の前提の中で、策謀家として成長してゆく物語。701年の大宝律令によるこれまでにない新しい国家形成を目指した生き様がよく分かる。

 

ただ、天武天皇、持統天皇、文武天皇、元正天王や蘇我系、中臣系が入り乱れるので、藤原京、平城京時代の歴史小説を読む際の前提として、家系図だけを借用させてもらう。

この小説の中で、持統天皇が高市皇子に次期天皇になった場合は軽皇子(文武天皇)を皇太子にすることを条件に太政大臣にするなど、物語のわき役になっている。上図には高市皇子の家系を青□でメークした。

 

鎌取が天智天皇から承った藤原姓は、上図の中段にあるように旧中臣系に与えられた。この本には、その後、不比等が年上である意美麻呂の言動から、藤原姓を不比等系以外から剥奪した物語も出てくる。

 

また、軽皇子(後の文武天王)の乳母であり、後宮の長である縣犬養三千代との政略?結婚が成功し、軽皇子が宮子と結婚し首皇子(後の聖武天皇)を、また三千代と不比等の間に光明子が生まれたことから、不比等に「天風」が吹き始める。これがこの本のタイトルになっている。