古代史の基礎3-2(青銅器不在の弥生時代)


古代史を読んでいると、やはり「祭祀の道具やその地域性、またいつ頃その終焉するのか」について予備知識が必要になるので、

 

前回ブログでは、

 

吉田広「弥生青銅器祭祀の展開と特質」、国立歴史民俗博物館研究報告 第 185 集 2014 年 2 月

 

の要旨から、武器用青銅器、銅鐸という二種類の弥生青銅器の登場、古墳前の墳丘墓の時代に地域ごとに祭器化した青銅器が変容し、墳丘墓祭祀から古墳祭祀へ交代していく中で弥生青銅器が終焉し、金属光沢と文様造形性という特質が融合して銅鏡に継承されていく流れが理解できた。

 

また、これらの点を整理されたポンチ絵も引用させてもらった。

 



今回のブログでは、本論文の要旨をまとめた上の左図「日本列島青銅器文化の階梯」の理解を深めることを目的に、論文の中身の詳細を順番に整理してゆく。

 

論文の構成は、以下のようなので、第1章から中身を整理してゆく。なお、いつものように文中の青字は引用文、黒字は筆者のコメントである。

 

論文「弥生青銅器祭祀の展開と特質」の構成

1. 弥生青銅器(弥生時代の青銅器)の登場

1-1 青銅器不在の弥生時代

1-1-1 遼寧式銅剣転用品

 

① 今川遺跡出土青銅器

② 井ノ山遺跡出土青銅器

③  松菊里遺跡出土青銅器

1-1-2 比恵遺跡出土銅剣形木製品

1-1-3 三沢北中尾遺跡出土銅斧

1-1-4 弥生時代前期青銅器文化の可能性

1-2 武器形青銅器登場の階梯

1-2-1 青銅器以前

1-2-2 完品武器形青銅器の登場

1-3 銅鐸登場の階梯

1-3-1 銅鐸の登場時期

1-3-2 銅鐸の登場以前

1-3-3 銅鐸登場の特性

1-4 小結

 

2. 弥生青銅器の祭器化

2-1 武器形青銅器と銅鐸の祭祀性

2-2 武器形青銅器の変容

2-2-1 北部九州における武器形青銅器の変容

2-2-2 銅剣の関部双孔

① 関部双孔銅剣の存在

② 関部双孔の存在率

③ 関部双孔の初現

④ 関部双孔の機能

2-2-3 武器形青銅器取り扱いの二相

2-3 青銅器模倣品の展開

2-3-1 各青銅器の模倣

① 銅矛模倣品

② 銅戈模倣品

③ 銅剣模倣品

④ 銅鐸模倣品

2-3-2 青銅器模倣の地域的展開

① 北部九州の銅戈模倣

② 中部高地の銅戈模倣

③ 近畿の銅剣模倣

④ 瀬戸内の銅剣模倣

⑤ 近畿の銅鐸模倣

2-3-3 青銅器模倣の特性

2-4 地域型青銅器の確立

2-4-1 地域型青銅器の分布

2-4-2 地域型青銅器と弥生社会

① 北部九州における青銅器の分節化

② 平形銅剣と文京遺跡

③  荒神谷遺跡の大量埋納

2-5 銅鐸の変容

2-5-1  武器形青銅器の同笵関係

2-5-2 銅鐸の同笵関係

2-5-3 武器形青銅器と銅鐸の方向性の差異

2-6 小結

 

3. 弥生青銅器を用いた祭祀の終焉

3-1 後期の青銅器祭祀

3-1-1 青銅器祭器の分布

3-1-2 対馬の青銅器

3-2 青銅の行方

3-3 銅鏡の選択

3-4 小結

 

4. まとめ 


では、第1章から整理していこう。

 

1. 弥生青銅器(弥生時代の青銅器)の登場

1-1 青銅器不在の弥生時代

1-1-1 遼寧式銅剣転用品

① 今川遺跡出土青銅器

② 井ノ山遺跡出土青銅器

③  松菊里遺跡出土青銅器

1-1-2 比恵遺跡出土銅剣形木製品

1-1-3 三沢北中尾遺跡出土銅斧

1-1-4 弥生時代前期青銅器文化の可能性


いきなり、遼寧式銅剣というキーワードが分からないので、ここから調べてみる。

 

遼寧式銅剣とは

中国の遼寧省では春秋時代(前772年~前403年)や戦国時代(前404年~前221年)の墓から、また時代は分からないが朝鮮半島でも発見されている銅製の剣。

 

これを論文の図26に書き込んだのが下図である。

遼寧式銅剣の代表的な形状は左図。俗に「有茎式銅剣」の一種と言われているようだ。。

 

身の両側縁,中央近くに棘状突起があり,身の下半部は琵琶の胴部のようにふくらんでいる。このことから,琵琶形銅剣ともいう (以前は満州式銅剣と呼んだ))。

さて、論文の1-1節「遼寧式銅剣転用品」とあるので、次にこれを調べる。

 

遼寧式銅剣からの転用とは、

 

今川遺跡から出土した青銅器に「遼寧式銅剣の先端部付近から再加工した可能性が高い」とある。論文図1-3がその出土品の形状である。

 

これと、数珠の遼寧式銅剣の先端部を追加してみたものが下図である。確かに、図1-3の出土品は遼寧式銅剣の先端を加工して鏃(ヤジり)状に再加工したような形状である。

 

また、同じ今川遺跡で出土した図1-2の青銅器は、遼寧式銅剣の中心か淵周辺をより強く再加工すればできそうな気がする

以上のように、第1章「弥生青銅器(弥生時代の青銅器)の登場」と1-1節「青銅器不在の弥生時代」にあるように、完成した銅剣などの青銅器が倭国に入る前段階で、銅剣の一部を利用したものが入り始めたようだ。

 

この点を論文の図26にメモとして書き込んでおく。

 

次回ブログでは、1-2節「武器形青銅器登場の階梯」に進むことにしよう。