森浩一「古代史おさらい帖」


サブタイトル「考古学・古代史課題ノート」、2011年初出。10年前の本。

 

本書の狙いは、「はじめに」あるように2点ある。

  • 古代史を考える上で、単に既成の学問成果を列挙するだけではなく、一見学問の成果(到達点)のようにみえる事柄についても、その問題点を列挙しておさらいすることが本当の入門書になること
  • 一つずつの知識を、クイズの答えのように暗記するのではなく、それが強固な資料を咀嚼したうえに出来上がっているのか、まだそこまでは至ってないのかを、一人一人が自ら点検して会得してゆくことが大事

この点は、考古学に限らず、物事の根源を会得する際には、非常に大事なことである。

 

■なので、今回のブログでも、森氏のおさらい帖が今後もいつでも引き出せるように、目次を列挙しておく。どこを読んでも奥が深い感じがした。


「古代史おさらい帖 ー考古学・古代史課題ノートー」

1 土地の見方

 

1-1 海道と島々を考える

1-1-1 貝の交易

1-1-2 土地の認識と島々の名称

1-1-3 黒曜石と北東アジア交通網

1-1-4 越と越州-船で行ける場所

1-2 変貌する河内と摂津ー国生み神話の謎

1-2-1 八十島祭とふたつの「生」郡

1-2-2 長屋王木簡と大八洲の祭祀

1-2-3 神武東征と難波碕・河内湖の地形

1-2-4 仁徳紀の河内湖の治水と都市づくり

1-2-5 「堀江」と大川ー蘇る古代の都市計画

2 年代の見方

2-1 時間をどう記述したか

2-1-1 「常陸国風土記」の時間記述

2-1-2 天皇の名か、宮の名か?

2-1-3 「元号」の使用はいつからか

2-1-4 「日本書紀」における元号記述

2-2 銅鏡の「年代」をめぐって

2-2-1 「年号」鏡は年代の定点にできるか

2-2-2 「景初三年」銘銅鏡は”卑弥呼の鏡”か

2-2-3 銅鏡の銘文に対する心がまえ

2-2-4 神原神社古墳の「景初三年」銘鏡

2-2-5 「景初四年」銘鏡ー完全な銘文ーの発見

2-2-6 「青龍三年」銘の方格規矩鏡(きくきょう)ー舶載(はくさい)か仿製(ぼうせい)か

2-2-7 伊都国の方格規矩鏡

2-2-8 「方角規矩鏡」を考える

2-2-9 「青龍三年」の国際情勢

2-3 諸所に刻まれた年号

2-3-1 刀剣に刻まれた年号

① 東大寺山古墳の刀の「中平□年」銘

② 埼玉稲荷山古墳の剣の銘文

③ 江田船山古墳の刀の銘文

2-3-2 関東の文字文化ー上野(こうずけ)三碑の年号と銘文

① 那須国造碑の銘文

② 上野三碑の銘文

2-3-3 石上神功の七支刀の銘文

2-3-4 墨田八幡宮の「癸未(みずのとひつじ)年」銘の人物画像鏡

① 百済の斯麻(しま)王大墓をめぐって

② 河内での青銅器の製作

③ 銘文は現物に即して読む

2-4 「暦」はどのように使われたか

2-4-1 干支の使用

2-4-2 漆紙文書(うるしがみもんじょ)と暦

2-4-3 干支六角柱と菅江真澄

① 秋田の埋没建物

② 記憶のメモ用の干支六角柱

2-4-4 「大化」は最初の元号か

① 宇治橋建造と「大化二年」

② 舟橋と山崎橋

③ 上毛野(かみつけの)の佐野の舟橋

④ 道登と高句麗の大同江の大橋

⑤ 再び宇治橋と大化の元号

3 「人」の見方

3-1 「古事記」の構造

3-1-1 太安万侶とその墓

3-1-2 「古事記」序文の人(神)名と時代区分

3-2 倭人=「呉の大伯(たいはく)」の後裔(こうえい)伝承の重要性

3-2-1 倭人と文身(ぶんしん)ー「華中の王」始祖伝説

3-2-2 記紀の基本構想としての「神武東遷」

3-2-3 日本神話の骨組みの大切さ

3-2-4 宣教師の「神武天皇=太伯子孫」説

3-3 複数の「倭人」の存在

3-3-1 二つの九州島ー華北ルートと華中ルート

3-3-2 二つの九州人ー倭人と東鯷人(とうていじん)

3-3-4 女王国vs.狗奴国(=後の熊襲)

3-4 南九州を考える

3-4-1 熊襲(曽)はどこにいたのかー「襲」(曽)の重要性

3-4-2 串間(宮崎県)から出土した玉璧(ぎょくへき)

3-4-3 九州の前方後円墳を考える

3-4-4 球磨の鎏金鏡(りゅうきんきょう)

3-4-5 熊襲戦争と肥後の俘囚(ふしゅう)料

① 鞠智(菊池)城の役割

② 熊襲に備えた俘囚と肥後の俘囚料

3-5 海を渡る倭人たち

3-5-1 曹操宗族墓で発見された「倭人字磚(わじんじせん)」

3-5-2 中国側の徐福伝説

3-5-3 日本各地に残る徐福伝説

おわりにー百済・武寧王の子孫としての桓武天皇