古代史の基礎6-1(炭素14年代測定法とは)


これまでの「古代史の基礎」では弥生時代の年代定義は、2003年5月以降から歴博が発表した「炭素14年代測定による弥生時代の年代」としている。

 

一方、身の回りの歴史書では、弥生時代の開始年代の定義(=九州北部で本格的な水田稲作が開始された時期をもって弥生時代の開始とする)はすべて習ってきた年代である。特に、自分なりに古代史の分かった範囲でデジタル年表に置き換えていこうとすると、弥生時代の開始年代が約500年ずれることになる。

 

下記で後ほど示す参考論文のうち、論文2の図11が歴博が発表した九州北部の弥生時代の定義と従来の年代観の比較表である。図中の赤枠や黄色塗りつぶしは、追記したもの。今後もこの図を参考にするため、引用させてもらう。

 

例えば、弥生時代~古墳時代のデジタル年表作成の参考書(寺沢薫「日本の歴史2 王権誕生」、講談社学術文庫2000年初出、2014年6月第10刷)では、これまでの弥生年代の定義となっている。これはこれで、中国、朝鮮半島からの渡来や逆に倭人の移住の観点で理解できるため、弥生時代の開始年代に注意しながら今回のブログと並行してデジタル年表化を進めることにしよう。

 


 

などなど、今回ブログから何回にわけて、素人なりに、弥生時代の開始年代を炭素14年代測定法で議論した論文も幾つか集めたので、測定法や測定試料、測定結果の見方などから、弥生時代の開始年代を決めるロジックを勉強させてもらうことにした。

 

論文1

坂本 稔「弥生時代の開始年代―AMS14C 法のはたす役割」、日本真空学会、Vol. 50, No. 7, 2007

論文2

藤尾慎一郎、今村峯雄、西本豊弘「弥生時代の開始年代 ―AMS -炭素14年代測定による高精度年代体系の構築―」、総研大文化科学研究、No.1、2005年8月

論文3

福岡市教育委員会 2003 『雀居9』福岡市埋蔵文化財調査報告書748

 


論文1は、2007年に歴博の坂本氏が日本真空学会に投稿した解説書であり、炭素14年代測定法とその役割について概説されている。とても分かりやすいので、ここを足掛かりに炭素14年代測定法(14C測定法と略す)とはどんなものか調べてみる。

  • 炭素14年代(単位:14C BP)は,西暦1950年の大気中 14C 濃度を基準とし,14C の半減期を5,568年(実際には5730年)として得られた経過時間を西暦1950年から遡った年数で表したもの

論文2の藤尾氏の解説を引用させてもらうと、自然界の炭素原子は、炭素12、13、14の三つの同位体の混合物と定義される。

論文2に、AMS(加速器質量分析法)法による炭素14年代測定法のメリットが書かれている。

  • 試料中の炭素14の数を直接測定できること
  • 少ない量(炭素ベースで1mg)の試料でも、ごく短時間(十数分)で測定できること
  • 過去のベータ法では測ることができなかった土器に付着した炭化物の年代推定が可能となった

また、同論文の図1には、測定値から年代を割り出す「暦年較正曲線(INTCAL98)」に関する概説があるので、引用させてもらう。

  • 界的なデータベースであるINTCAL98は、年輪年代によって西暦が明らかな年輪の炭素14年代を測定してつくった炭素14濃度のデータベースである。このデータベースと試料中に残っている炭素14濃度を比較し、西暦換算をおこなうのである。

論文2に、測定値から較正年代への一例がある。

概念的には、論文2の上図の解説で把握することができる。具体的にどういう計算が行われているのかは、論文1にあるので、それも引用させてもらい、計算方法については割愛して、次回ブログに進むことにする。


論文1では、AMSによる炭素14年代の割り出してゆく時に一番の問題は、分析する試料の方にあるとしている。確かに、その通りだと思う。

 

次回のブログでは試料を中心に論文を読んでいこう!