黒岩重吾・再読「天風の彩王 藤原不比等」


黒岩作品を順不同で読んだこともあり、奈良時代のキーマンである藤原不比等を主人公としたこの本を再読した。

 

672年の壬申の乱の前に藤原鎌足がなくなっているため、鎌足一族は壬申の乱の際に大友皇子派と大海人皇子派と中立を保った(小説では、鎌足が史を預けた田辺氏に中立を遺言している)。確かに、中立でなければ時の流れとして大友派で不比等は後日政界に現れなかったはずだ。

 

ただ、この前に永井路子「美貌の女帝(元正天皇)」では元明天皇や元正天皇の不比等に対するイメージが大きく異なっている。黒岩作品では、持統・元明・元正などは不比等を天智天皇の落胤として好意をもって接しているが、永井作品ではその逆となっている。

 

作品として二つのものを読むことはそれなりに面白いと思った。


永井作品では、持統・元明・元正は、蘇我倉山田石川麻呂の血統を引きその血統を守るために、不比等が軽皇子(文武天皇)の侍女長の県犬養三千代を介して宮子を夫人にすることに嫌悪感を抱いている。

 

これらの点も血筋として分かるように、この時代の人物相関図にも盛り込んでいる。